メタバースに興味あるけど「メタバースはオワコン」「メタバースなんて誰もやってない」なんて声もよく聞く。実際のところどうなのか? 具体的に教えてほしい
FacebookがMetaへと社名を変更したことでバズワードとなったメタバース
最近はメディアでも取り上げられる機会が多くなり、メタバースという言葉の認知度はかなり高まっていると思います。
しかし一方で
「メタバースなんて誰もやってないしオワコンでしょ?」
という否定的な意見も多くあるのも事実です。実際「メタバース」で検索すると、こういったネガティブワードが数多く出てきます。
メタバースで検索すると上位はネガティブワードで占められている
果たして「メタバースはオワコン」「メタバースなんて誰もやってない」説は真実なのかどうか、メタバースの検索数やメタバースサービスのユーザー数を調査して、徹底的に深堀していきたいと思います。
そもそもメタバースとは何なのでしょうか?
結論から言うとメタバースには明確な定義がないので人によって言ってることがバラバラです。
ざっくりというとメタバースとはインターネット上に構築された仮想空間です。
アバターと呼ばれる分身を用いて仮想空間にダイブして、ゲームをしたりコミュニケーションをとったり土地やアイテムの売買でお金を稼ぐこともできるのが一般的にメタバースと解釈されています。
メタバースと呼ばれるサービスは多種多様にありますが、フォートナイトやどうぶつの森をメタバース扱いする人もいれば、VRゴーグルを用いないメタバースサービスはメタバースと認めないという人もいれば、完全なメタバースはまだ存在しないという人までいて様々です。
「世界2.0 メタバースの歩き方と創り方」の著者である佐藤航陽氏は、メタバースサービスを以下の3種類に分けて解釈しています。
佐藤航陽氏と堀江貴文氏の対談動画。メタバースに対する理解が非常に深まります。
この3種類は特徴が全く異なり、遊んでいるユーザーの属性や目的も大きく異なります。
ですので、これらをひとくくりにして「メタバースはオワコン」「メタバースなんて誰もやってない」と判断するのは非常に乱暴です。
今回はこれらの分類を参考にして、それぞれのメタバースサービスのユーザー数や注目度から「メタバースはオワコン」「メタバースなんて誰もやってない」説は真実であるのかを追求していきます。
メタバースの定義については人によって様々な解釈があることを解説してきましたが、では「メタバース」という言葉自体の注目度はどうなのでしょうか? Googleトレンドで検索数を調べてみました。
Googleトレンドとは、ある単語がGoogleでどれだけ検索されているのかをグラフで見ることができるツールです。
日本と世界の両方で過去3年半(2021/01/01~2024/8/16)の「メタバース」の検索推移を調べてみて
と判断することができます。
日本における「メタバース」の検索推移
世界における「Metaverse」の検索推移
日本と世界どちらも2021年10月に急激に伸びていることが分かります。FacebookがMetaへと社名を変更すると発表したのがちょうどこの時期です。
2022年1月にピークを迎えましたがその後は右肩下がりに落ちていってるのがわかります。
2023年10月に一時的に伸びていますが、これはMetaQuest3が発売された影響でしょう。
検索推移だけを見ると右肩下がりで伸びる気配がないので「メタバースはオワコン」と言われる理由の一つとなっています
では実際のメタバースサービスの注目度やユーザー数はどれぐらいなのでしょうか。
の3つのメタバースサービスの注目度とユーザー数を調査して、メタバースオワコン説を検証していきます。
3DCG系のメタバースサービスの代表と言えばFortnite(フォートナイト)です
Fortnite(フォートナイト)を販売しているEpic Gamesは、State of Unreal GDC 2023にてFortnite(フォートナイト)の月間アクティブユーザー数は約6800万人。全体のユーザー数は約5億人であることを公開しました。
2017年にリリースされてから6年も経っているのに驚愕のユーザー数。まさに世界最大級のメタバースプラットフォームと言えるでしょう。
3DCG系のメタバースサービスはオワコンどころか、完全に世の中に浸透していると言えますね
VRSNS系を代表するサービスと言えばVRChatです。
まずは「VRChat」の検索数をGoogleトレンドで調べてみました。
世界における「VRChat」の検索推移(2017/01/01~2024/8/16)
VRChatのアーリーアクセス版がスタートしたのが2017年2月1日ですが、検索数は同年11月ごろに急上昇。
その後は急速に低下してしばらくは横ばいでしたがFacebookがMetaへの社名変更を発表した2021年10月に再度急上昇。その後は安定して検索されていることがわかります。
「メタバース」の検索数は右肩下がりでしたが「VRChat」は安定して高水準をキープしているので「メタバース誰もやってない」というのは間違っていると言えます。
次にVRChatのユーザー数を調べてみました。
Steamが公表しているデータを見ると瞬間最大同時アクセス数は右肩上がりに増えています。
Steamが公表しているVRChatの瞬間最大同時アクセス数。2024年元旦には51,321人で史上最高値を更新。サービス開始以来、右肩上がりに伸びているのがわかる
引用元:VRChat - Steam Charts
このデータはSteam版のVRChatのユーザー数しか含まれてないので、Quest版を含めると2024年元旦に105,991人で史上最高値を更新しています。
【note公開】
『メタバースは終わった』? 訳ないでしょ! 各種統計データを元に全力解説記事書きました! 約5,500字、書き下ろしです! #メタバース
VRChat同時アクセス10万人突破! 5年で人口は7倍に! メタバース人口統計レポート【2024年3月最新】 https://t.co/2FYlUl4qk7— バーチャル美少女ねむ/Nem⚡8/28 岩波書店『VTuber学 (共著)』発売! (@nemchan_nel) March 23, 2024
では、瞬間のユーザー数ではなく全体のユーザー数はどれぐらいいるのでしょうか?
VRChatは月間アクティブユーザー数を発表していないため正確な数字は不明ですが、瞬間最大同時アクセス数から推測すると「少なく見積もっても数百万人、多くて一千万人程度」と言われています。
VRChatのMAU(月間アクティブユーザー数)ってどれくらい? こちらの記事だと400万人(2022Q1時点)ってなってますけど、ソースがよくわからず。瞬間で9万人超えってことはもっと多くて、数百万人台の後半いってる気もしますね~ #VRChat
Introducing The Metaverse Universehttps://t.co/kKz0dvKvrr pic.twitter.com/iHwCBqfwjd— バーチャル美少女ねむ/Nem⚡大賞作家&国連登壇系VTuber (@nemchan_nel) January 24, 2023
3DCG系と比べるとかなり少ないですが、右肩上がりに伸びているので「オワコン」「誰もやってない」とは言えなさそうです。
最後にNFT系についてユーザー数と注目度を調べてみました。
NFT系の代表的なサービスと言えば「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」と「Decentraland(ディセントラランド)」です。
少し古いデータですが、両サービスの月間アクティブユーザー数は以下の通りです。
The Sandbox(ザ・サンドボックス):20万人以上
引用元:The Metaverse in Asia Strategies for Accelerating Economic Impact
Decentraland(ディセントラランド):56,697人
Let's have a look at some of September's data:
56,697 MAU
1,074 Users interacting with smart contracts
1,732 minted Emotes
6,315 sold Wearables
300 Creators received royalties
161 created Community Events
148 DAO Proposals— Decentraland (@decentraland) October 7, 2022
3DCG系やVRSNS系と比べるとかなり寂しい数字です。
The Sandbox(ザ・サンドボックス)では「SAND」Decentraland(ディセントラランド)では「MANA」という仮想通貨がゲーム内通貨として用いられていますが、価格はピーク時から激減しています。
仮想通貨「SAND」の価格推移
仮想通貨「MANA」の価格推移
検索数で比べても一目瞭然。VRChatは高水準をキープしていますが、NFT系はメタバースがバズワードとなった2021年に一時的に上昇しただけで、その後は激減しています。
NFT系のメタバースサービスは一時的に盛り上がっただけで、現在は「オワコン」「誰もやってもない」と言われても仕方ないでしょう
以上、3種類のメタバースサービスのユーザー数や注目度から総合的に判断すると「メタバースはオワコン」「メタバースなんて誰もやってない」説は誤りであると言えるでしょう。
メタバースは明確な定義がないゆえに誤解や勘違いが生まれやすいのも事実です。
特にVRSNS系のメタバースとNFT系のメタバースは全くの別物なので、この2つを混同することがメタバースの理解を妨げている一番大きな理由だと思います。
メタバースは新しい技術でありその歴史はまだ浅いです。今後新しいサービスがリリースされることで、その種類も増える可能性もありますし、どのように発展するかも誰にも分かりません。
メタバースの定義が決まるのはまだしばらく先になるでしょう。