メタバースはざっくりと3種類に分けられる


旧facebook(フェイスブック)がMeta(メタ)へと社名を変更したことで、一躍注目を集めるようになった「メタバース」ですが、よく分からないと感じる人は多いのではないでしょうか。


メタバースについては明確な定義はなく言葉だけが先行しているため、抽象的でいまいちよく分からないという人も多いかと思います。メタバースについて理解を妨げているのは「メタバース」という言葉が多くの技術や分野を指しており、人によって解釈の仕方が異なるからです。



「世界2.0 メタバースの歩き方と創り方」の著者である佐藤航陽氏によると、メタバースは以下の3種類に分けられると解釈しています。


  1. VRSNS派 VRデバイスを用いて体験するメタバース。SNS的な要素が強い
  2. NFT派 NFTを活用して仮想空間内の土地やアイテムを売買できるメタバース。投資の要素が強い
  3. 3DCG派 3次元空間を舞台としたゲーム系メタバース。ゲーム要素が強い


その3種類は特徴が全く異なり、遊んでいるユーザーの属性や目的も異なる場合が多いです。今回紹介する3つのタイプを知ることで「メタバース」の理解が深まるかと思います。



メタバースは新しい技術であり、その歴史はまだ浅いです。今後新しいサービスがリリースされることで、その種類も増える可能性もありますし、どのように発展するかも誰にも分かりません。


そのため、本文に書かれている内容はあくまでも参考程度に読んでいただければ幸いです。



VRSNS(ソーシャルVR)派のメタバース


メタバースを3つに分類したうちの一つはVRSNS(ソーシャルVR)派です。


VRゴーグルを用いて仮想空間にダイブし、アバターを用いて多人数とコミュニケーションを取ることができるものに分類されます。


SNS はインターネット上で人々が交流するためのプラットフォームのことを指しますが、それらがVRで体験できるのでVRSNSと呼ばれています。



メタバースとVRはセットで語られることが多いですが、メタバース=VRではありません。メタバースは「仮想空間」そのものを指し、VRは「仮想空間を現実のように体験できる技術や手段」のことです。


最初に「メタバース」という言葉が使われた小説「スノウ・クラッシュ」でも、メタバースをこのように解釈しているので、本来の意味に最も近いのはVRSNS派の「メタバース」であると考えられます。



うたの

うたの

 

私たちが思い描くメタバースに最も近い分類と言えるのではないでしょうか。



VRSNS派のサービス事例


VRSNS派に分類されるメタバースのサービスは以下のようなものがあります。


  • VRChat
  • バーチャルキャスト
  • Cluster
  • NeosVR


それぞれのサービスを簡単ではありますが紹介していきます。



VRChat

VRChat
VRChat world「Gion Street - 祇園通り日本」にて



VRSNSで最も有名なのがVRChatです。



VRChatには多数のバーチャル空間である「ワールド」が存在し、そこで他のユーザーとコミュニケーションを取ることができます。


ボイスチャットを使って会話をしたり、自分の体の動きをアバターに反映させることでボディランゲージも楽しむことができます。ビデオ会話などとは違って、実際にその場にいる感覚を得ることができます。


デスクトップ版もあるので、VR機器がなくてもプレイ可能です。



≫VRChatの始め方と必要なもの(VRなしでも遊べる)



バーチャルキャスト


「ミクランド yozakura」にて



「バーチャルキャスト」は国産のVRSNSとして知られており、VRChatと同じくアバターを使ってVR空間で多人数とコミュニケーションをすることができます。


VRChatに比べるとユーザー数や知名度は劣るものの、カメラ機能や配信機能が充実しているため、ライブ配信に利用している人が多いのが特徴です。


≫バーチャルキャストの始め方と必要なものを解説



Cluster


Clusterはバーチャルキャストと同じく国産のVRSNSです。VR機器だけでなく、PCやスマホからでもアクセル出来る利便性の高さが特徴です。


バーチャルイベント会場として利用する人が多く、VRユーザー・PCユーザー・スマホユーザーが同じ会場でコミュニケーションをとることができます。



NeosVR


NeosVRはチェコのベンチャー企業がサービスを開始したVRSNSです。


圧倒的自由度の高さが特徴で、仮想空間内でアバターやワールドを創造したり、仮想通貨NCRを使って経済活動を行うことができます。現時点で最も厳密なメタバースの定義に適したサービスと言えます。


VRだけでなくPCのデスクトップにも対応しています。


NFT派のメタバース

NFT派


メタバースを3つに分類したうちのもう一つはNFT派です。



NFT派のメタバースは、NFTと呼ばれる技術を用いて仮想空間の土地やアイテムを売買できることが特徴です。


≫【初心者向け】NFTとは?最低限知って起きたい基礎知識



NFT派のメタバースサービスでは仮想通貨が共通通貨として利用されており、仮想空間内の土地やアイテムを売買できることから、投資の対象として一躍注目を集めました。


過去にはDecentralandというメタバースサービスの土地が2.7億円で売却されたことが大きな話題となりました。そのことから「メタバース=稼げる」という認識が広まり、メタバースについての解釈がややこしくなった理由として考えられます。




VRSNS派のメタバースとNFT派のメタバースは全くの別物と考えた方がいいでしょう。この2つを混同することがメタバースの理解を妨げている一番大きな理由です。



うたの

うたの

 

VRSNS派は楽しむことに重きを置いていますが、NFT派は投資の対象として稼ぐことを重きにしています。そのためVRSNS派とNFT派は対立することもあるようです。



NFT派のサービス事例


NFT派に分類されるメタバースのサービスは以下のようなものがあります。


  • The Sandbox(ザ・サンドボックス)
  • Decentraland(ディセントラランド)



The Sandbox(ザ・サンドボックス)


The Sandboxは、ブロックチェーン技術を利用したメタバースプラットフォームです。


アバターを操作して他のユーザーとコミュニケーションをとれるだけでなく、ゲーム内の土地を購入したり、独自のキャラクターやアイテムを作成することができます。それらをNFTマーケットプレイスで売買することで、ゲーム内通貨「SAND」を獲得することができます。


SANDはリアルマネーと交換可能であるため、ゲームを楽しみながら収入を得ることも可能です。近年、メタバースへの関心が高まるとともにThe Sandboxにも注目が集まっており、全世界で4000万ダウンロードを突破しています。



Decentraland(ディセントラランド)


DecentralandはThe Sandboxと同じく、ブロックチェーン技術を利用したメタバースプラットフォームです。


「MANA」という仮想通貨を使った経済圏が形成されており、それによってゲーム内でNFT化された土地やアイテムを取引することが可能になっています。


DAO(Decentralized Autonomous Organization, 自律分散型組織)によって運営されており、代表者や管理者がおらずユーザーが直接組織の運営を行う仕組みで、これによりユーザーの意思に基づいた運営が実現されています。



うたの

うたの

 

The SandboxとDecentralandではそれぞれ独自の仮想通貨である「SAND」と「MANA」を使用しますが、これらは仮想空間内での土地やアイテムの購入に必要なだけで、サービス自体は無料で遊ぶことができますよ。

3DCG派のメタバース


メタバースを3つに分類したうちの最後の一つは3DCG派です。



具体的には「あつまれ どうぶつの森」や「フォートナイト」などの3次元空間を舞台としたゲームがこれに当たりますが、ゲームとは関係ないコミュニケーション目的で集まるユーザーも数多く存在するため、広い意味でのメタバースとして分類することもできます。


VRSNS派はコミュニケーション要素、NFT派は投資の要素が強いですが、3DCG派はゲーム要素の強いメタバースと言えるでしょう。



3DCGの技術の進歩は著しく、UnityやBlender、Unreal Engineなどのオープンソースの開発エンジンを利用すれば、個人でも高度な3DCGやアバターを作成できるようになりました。


そのためデバイスの普及が不可欠なVRSNSと比べると、3DCG系のメタバースの方が進歩が速いのではないかと推測されています。



3DCG派のサービス事例


3DCG派に分類されるメタバースのサービスは以下のようなものがあります。


  • あつまれ どうぶつの森
  • フォートナイト


いずれも世界的人気を誇るゲームですが、アバターを用いてコミュニケーションを取るために集まる場所としても活用されているので、広い意味でメタバースと解釈することができます。


VRSNS派・NFT派と比べるとユーザー数は圧倒的に多い(数億人規模)ですが、プレイしているユーザーはメタバースと認識している人は少ないかと思います。


「あつ森やフォートナイトがメタバースなのか? メタバースではないのか?」は、人によっても大きく意見が分かれそうです。


まとめ(メタバースはひとくくりにするには複雑な世界)

分類 特徴 主な使用デバイス ユーザーの目的 主なサービス事例
VRSNS派 VRゴーグルを用いて体験するメタバース VR機器 コミュニケーション要素が強い

VRChat
バーチャルキャスト
Cluster
NeosVR

NFT派 NFTを活用して仮想空間の土地やアイテムを売買できるメタバース PC 投資の要素が強い

THE SandBox
Decentraland

3DCG派 3次元空間を舞台としたゲーム系メタバース PC・スマホ・ゲーム機 ゲームの要素が強い

あつまれどうぶつの森
フォートナイト



以上、メタバースをざっくりと3種類に分けて解説してきました。


いずれもアバタ―を用いてインターネット上に構築された仮想空間でコミュニケーションをとるという点では共通していますが、使用するデバイスやユーザーの目的など、その特徴は大きく異なることが分かります。


「メタバース」は複雑で広い世界であり、各種類には優れている部分もあれば課題もあります。



メタバースについて理解するにはどんなに言葉で説明しても伝わり切りません。100の言葉より1の体験。実際に体験してみるのが一番です。



うたの

うたの

 

少しで興味を持っている人は、私と一緒にメタバースの世界に飛び込んでみてはいかかでしょうか?